説教:『傷をもったままで』
今野善郎牧師(那須塩原伝道所)
聖書: ヨハネによる福音書20:24~29
極寒の北極点やヒマラヤの高峰に三度挑戦した。大学で山岳部に入部し、同時に初めて教会の礼拝に出席した。登山とキリスト教だけは真面目に希求した。大学を卒業し、神学校に入学した年、インド・ヒマラヤに行き、雪崩事故に遭った。すぐ横にいた仲間と流され、彼は墜死し、私は絶壁の手前で止まり、生き残った。自分だけが生き残ったことを苛みつづけた。
35歳、鹿児島加治屋町教会に赴任した年、ソビエト・パミールからの念願のヒマラヤ登頂を果たし、激しい登山は終わった。でも、静かにしまい込んでいた雪崩事故が、たびたびフラッシュバックし、いたたまれない気持ちになるのだった。イエス様の十字架の贖いによって罪が赦されたと信じながらも、平安がなかった。何故。ヨハネによる福音書だけが、痛々しい傷をもったまま主は復活していた。それは、傷をもったままで生きて良い。むしろ、傷を通してもがき問われ続けることが本来的な生き方で、あなたはそこで養われるのだと教えられた。不思議に平安があった。